「今のところExcel(表計算ソフト)で回っとるけん、無理にクラウドに移さんでもよかやろ?」——そう思う気持ちはよく分かります。ばってん、“困ってないつもり”がコストやリスクの見落としになっとることもあります。本記事では、クラウドへ移す前に必ず確認したい10項目と、福岡の現場感での判断ポイントを3分で整理できます。まずはチェックして、移行の要否を落ち着いて決めましょう。
この記事のポイント
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Excelの“隠れコスト”を見抜く
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ファイル共有・二重入力・属人化が時間とミスを生みます。数を数えるだけで移行効果が見えてきます。
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移行の判断は10項目
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容量・同時編集・履歴・権限・連携・自動化・品質・保守・セキュリティ・監査の10観点で判断できます。
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福岡の現場例でイメージ
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卸・製造・建設などBtoB中心に、段階移行のコツを紹介します。まずは1部門・1帳票から試しましょう。
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よくある失敗を回避
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複雑マクロ依存・命名ルール崩壊・共有フォルダ地獄を避ける手順を解説します。
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安全設計で安心運用
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権限・バックアップ・退職者対応など“もしも”に備える基本を押さえましょう。
まずは診断:Excelのままで本当に困ってない?(10項目)
次の10項目にチェックして、Excel継続かクラウド移行かの方向を決めましょう。3つ以上当てはまれば、移行検討の価値ありにできます。
10項目チェックリスト
福岡の現場イメージ
博多の卸売では、見積台帳をExcelで回して「誰が最新か分からん」問題が常連です。久留米の製造では、受注→生産指示の二重入力で夜残業。筑紫野の建設では、現場からの工程進捗がメール添付で埋もれがち…“人に寄る”運用は、忙しいほど破綻します。数字で見える化して判断しましょう。
クラウドにするかどうか、10の見方で考えてみよう
「クラウドに変えるかどうか」は流行ではなく、今の仕事のやりやすさで決めればOKです。ここでは、かんたんに10の見方で整理してみましょう。
① ファイルの大きさと保存/② 同時に編集できるか/③ 間違いを戻せるか
容量オーバーで開けない、誰がいつ変えたかわからない——そんなときは、クラウドだと自動で保存・同時編集・履歴の記録ができます。ひとつの表をみんなで開けるなら、もう「閉じてから開いて」がいりません。
④ 見せたい人だけ見せられる?/⑤ 外の人に共有しやすい?/⑥ スマホで見れる?
部署や取引先ごとに「見せる・見せない」を分けたい、現場からスマホで入力したい。そう思ったらクラウド向きです。共有フォルダは便利だけど、細かい制御が苦手なんです。
⑦ 他のシステムとつなげたい?/⑧ 手作業を減らしたい?
会計ソフトや在庫管理とつながっていないと、同じ数字を二度打ちになります。クラウドなら、表と表をつなぐ「データの通り道」が作れます。たとえば、注文を入力したら自動で請求書に反映する仕組みなど。
⑨ 間違いを減らしたい?/⑩ 管理をラクにしたい?
Excelは自由すぎて、誰でも書き換えられます。クラウドなら、変更履歴・承認・チェックルールを決めておけるので、あとで原因を追いやすくなります。「うっかり直してしまった」が減ります。
福岡の身近な例
- 糸島の食品工場:出荷実績をExcelで管理していたけど、クラウド表に変えて履歴が残るようにしたら、「誰が入力したか」がすぐ分かるように。
- 東区の設備会社:見積はExcelのまま、承認だけクラウドに変えたら、印鑑待ちがなくなってスピードアップ。
- 博多の商社:外出中の社員がスマホで在庫表を確認できるようになり、電話確認が半分に。
つまり、「今のままで手間が多い」と感じたら、クラウド化を検討するタイミングです。“困ってないようで、時間を取られていないか”を見直すのが第一歩です。
どう進める?Excelを活かしながらクラウドに変えるコツ
いきなり全部クラウドにすると、たいてい現場がパンクします。
なのでおすすめは「少しずつ置き換える」やり方。
いま使っているExcelをムダにせず、楽にクラウドへ進むステップを紹介します。
ステップ1:まずは棚卸し(30分でOK)
- 会社や部署で使っているExcelを全部書き出してみましょう。
- 用途・頻度・関係者をざっくりメモ。
- ファイル名に日付や担当がなくて混乱しがちなものは、あとで直す候補に。
- 「みんなで同時に触る」ファイルに★マークをつけておくと、どれからクラウド化すべきかが分かります。
ステップ2:まずは1枚だけクラウドに
いきなり全部変える必要はありません。
まずは入力フォームだけをクラウド化して、集計やグラフはExcelのままでOK。
たとえば「申請書」「日報」など、紙で回している1枚をオンライン化するだけで、
手入力の時間が減り、確認がラクになります。
ステップ3:自動でつながるようにする
次の段階は「つなぐ」こと。
注文や勤怠などのデータを、会計ソフトや在庫表と自動でやり取りできるようにします。
最初はCSV(エクセルの表を送る形)でも十分。慣れてきたら、システム同士をAPIでつなぐとさらに効率的です。
福岡の現場でのやり方例
- 博多の卸会社:受注フォームをクラウド化して、毎日CSVで販売管理に読み込み。メールの添付がなくなり、締め処理が早くなった。
- 久留米の製造業:不良報告だけクラウド入力にして、Excel現品票はそのまま活用。手戻り半減。
- 春日市の工務店:現場日報をスマホで入力、月末だけExcelで集計。現場の報告漏れがなくなった。
大事なのは、「一気に完璧を目指さない」こと。
Excelの関数やマクロを全部クラウドで再現しようとすると失敗します。
まずは「入力だけ」「承認だけ」など、小さく区切っていきましょう。
よくある失敗と、その回避法
せっかく移行しても「やっぱりExcelがいいね」と言われたらもったいないですよね。
ありがちなつまずきポイントと、避けるコツをまとめました。
よくある失敗パターン
- マクロ頼み:自動化をマクロだけで動かしていると、誰も触れなくなります。
→ クラウドでは「自動化ツール(例:GASやRPA)」を使う形に置き換えましょう。 - ファイル名がバラバラ:「最終版」「ほんとの最終」問題が再発します。
→ 「部門_用途_日付_担当者.xlsx」といった命名ルールを決めて共有を。 - フォルダが迷路:共有フォルダが深くなりすぎて、どれが最新かわからない。
→ 「部門×用途」の2段階くらいに整理してシンプルに。 - 説明不足:「なんか使いにくい」と戻る人が出ます。
→ 朝礼で5分、みんなで一緒に触る時間をつくりましょう。
安全に使うための最低限ルール
- 最初は「見せない」設定で始め、必要な人だけ権限を追加。
- 外部に送るときは期限付きリンクを使いましょう。
- 退職・異動した人のアカウントは、すぐに停止できるよう手順を残しておきましょう。
- バックアップは毎月1回テスト復元。「戻せる」を確認しておくと安心です。
福岡の“あるある”にも対応しよう
「取引先がExcel前提だから変えにくい」とよく聞きます。
その場合は、社内をクラウド、取引先にはExcelで出力という二段構えでOK。
両方使いながらでも十分に効率化できます。
同じ形式のテンプレートを全社で統一するだけでも、混乱は減ります。
迷ったら、まず「待ち時間」「二重入力」「上書き事故」の3つを数えてみましょう。
どれくらい減るかが分かると、上司や社長も納得しやすいです。
まとめ:まずは1枚から始めよう
- Excelは悪くありません。でも共有・履歴・権限・連携が必要になったらクラウドの出番です。
- 10項目チェックで現状を見える化し、まずは1つの帳票から移行してみましょう。
- 命名ルール・教育・権限、この3つを整えるだけでも「戻らない仕組み」になります。
次の一歩:今日のうちに自社のExcelをチェックして、★をつけた「同時編集が必要な1枚」だけ、来週テストしてみましょう。
「やってみたら意外と簡単」——それが最初の成功体験です。