「人が育たん」「だから人も集まらん」——福岡の現場でよう聞く声です。忙しかけん教育は後回しになり、結果として辞める人が増え、採用もうまくいかん。この悪循環は、実は小さな仕組みづくりで断ち切れます。この記事では、90日で始める最小の育成セット、現場が続けられる小さなDX(デジタル活用)、採用と定着の見直しポイントまで、福岡の商売に合う具体例でやさしく解説します。ここは押さえておきましょう。人は納得して動くと力を発揮できます。その納得をつくるのが「見える化」と「小さく回す仕組み」です。
この記事のポイント
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原因は「属人化・不透明・学び不足」
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人が育たないのは、仕事が人任せ、評価が曖昧、学ぶ機会が少ないからです。まず見える化から始めましょう。新人が安心して意見を言える状態=心理的安全性も同時につくれます。
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90日で最小の育成セット
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役割表・仕事の標準書・週次OJT(現場で教える訓練)・簡単な動画の4点で回せます。大きな投資は不要です。内から湧くやる気=内発的動機づけを引き出しましょう。
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小さなDXで「教え直し」を減らす
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スマホで撮る1分動画、チェックリスト、共通フォルダで知識を蓄積できます。更新の仕組みを作るのがコツです。
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採用は「育成方針」をセットで発信
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求人票に初月の学び計画と評価基準を明記しましょう。「育てる会社」は“この会社で頑張りたい”と思える気持ち(エンゲージメント)を生み、人が集まりやすくなります。
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地域に合う定着策
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行動にポイントを付け、地元ならではの小さな報酬で後押しします。続けられる仕組みが肝です。博多山笠の「役に立ちたい気持ち」を日常の職場に移しましょう。
なぜ「人が育たない→集まらない」の悪循環が起きるのか
採用を頑張る前に、まず現場の「育ちにくさ」をほどきましょう。原因を分けて見るほど、対処は簡単になります。感情のつまずきにも目を向けると、改善は早まります。
3つの原因をまず見える化する
属人化…仕事がベテランの頭の中だけ、教え方も人それぞれ/評価の不透明…何をできたら合格かが曖昧/学びの機会不足…忙しくて教える時間がない。この3点がそろうと新人は不安になり、定着しにくくなります。まずは「できた・できない」を判断できる基準を紙1枚でもよいので作りましょう。
福岡の具体例で考える
中洲の飲食店:仕込み手順が人ごとに違い、忙しい夜は教えられず新人が置いてけぼり/糸島の製造:検査基準が口頭中心でムラ/博多の観光業:繁忙期に研修ができず、繁忙期明けに離職…といった形で表れます。屋台で常連が新人を自然にリードするように、次の一手が見えるだけでも定着率は変わります。
よくある失敗
採用を増やして数で解決しようとする/高額な研修だけ入れて現場で回らない。どちらも仕組み不在のままで効果が続きません。「小さく、具体的に、週1で見直す」——ここが勝ち筋です。
悪循環を断つための最小セット(90日プラン)
大掛かりな制度より、まずは「小さく回る」育成セットを作りましょう。90日で形にできます。最初から全部は要りません。3業務に絞って試すのがコツです。
手順:3ステップで形にする
① 現状を見える化
主要な業務を5〜7個に分け、各業務の「合格ライン(例:注文受付3分以内、誤りゼロ)」を書き出します。写真や数値を入れると、判断がそろいやすくなります。
② 役割と育成スケジュール
「誰が・何を・いつ教えるか」を1枚に。週1回30分のOJT(現場で教える訓練)枠をカレンダーに固定します。
※OJTは屋台の修行と同じで、段階(ステップ)を明確にすると安心して上達できます。
③ 最小ドキュメントを作る
標準作業書(写真つき1〜2枚)/チェックリスト/1分動画を業務ごとに1セット。スマホで十分です。QRコードで現場からすぐ見れるようにしておきましょう。
「まず3業務だけ」など、範囲を絞ると続きやすくなります。できたら翌週に微修正——小さく回すPDCAが要です。
チェックリスト:毎週これだけ
- 週1回のOJT実施(30分)
- チェックリストで「◎・○・△」を記録(根拠もひと言)
- つまずき箇所を1分動画で撮り直し
- 役割表の更新(担当と期日を明記)
福岡の具体例
天神のカフェ:ラテの温度・抽出秒数を基準化→1分動画をスタッフLINEで共有/小倉の工場:梱包の検品ポイントを写真で可視化→不良率が減り新人の自信に。商店街の「顔が見える関係」のように、誰に聞けばいいかも役割表で示しましょう。
育成が回る仕組みづくり(小さなDX)
道具はシンプルで十分です。「探さずに見つかる」「誰でも同じ品質で教えられる」状態を目指しましょう。ツールは目的の手段。「人が使い続けられるか」から選びます。
用語ミニ解説(福岡の例つき)
- LMS(学びの管理箱):動画や資料を一か所で管理できる仕組み。最初は共通フォルダでもOKです。更新履歴が見えると安心感が増します。
- OJT(現場訓練):現場で先輩がつきっきりで教えるやり方。屋台で皿洗いから包丁へ段階を上げるイメージです。
- PDCA(計画→実行→見直し→改善):週1回の見直しで小さく回します。見直し会は15分でも効果大。
1人から始める資料化のコツ
スマホで縦動画→字幕で「ポイント3つ」を入れる→共通フォルダに「日付_業務名」で保存→QRコードを現場に貼る、の流れで十分です。見本(ゴールの姿)を最初に映すと習得が早まります。
よくある失敗
先に高機能ツールを入れて満足する/資料を作りっぱなしで更新しない。まずは「週1更新」を仕組みに入れましょう。続く仕組み=勝てる仕組みです。
集まる会社の採用・定着のコツ
人が集まる会社は、求人時点で「入社後の学び」を具体的に見せています。応募者は未来の自分を想像できると安心して応募できます。
求人票を見直す
- 初日の流れ、1週間・1か月・3か月の到達目標を明記
- 評価の見える化(例:受付時間、ミス率、顧客の声)
- 学びの機会(週1OJT、先輩の同席回数、動画教材)を記載
面談のしかた
「これまでの工夫を教えてください」など行動事例を聞く質問を用意し、実技のミニ体験(商品説明・簡単な段取り)も取り入れます。終わりに育成の進め方を図で説明しましょう。期待と不安の見える化が離職防止につながります。
福岡の具体例
地元高校・専門学校と授業見学→職場体験→内定後の動画学習をセット化/紹介制度に「紹介お礼(明太子詰合せ)」など地元らしい小さな特典を付けると、温かさが伝わります。商人の街・博多の“顔が見える関係”を採用にも。
現場が続けられる評価と報酬
評価は「伸ばしたい行動」を日々後押しできる形にします。お金だけでなく、地域に合う小さな報酬も効きます。行動が積み上がれば、結果はあとからついてきます。
行動にポイントを付ける
動画の更新、OJTの実施、改善提案などにポイントを付け、月1回で可視化します。ポイントは誰でも見える場所に。認められる実感が次の行動を生みます。
低コストの報酬設計
屋台巡りチケット、商店街の食事券、糸島の野菜セットなど、地元に回る特典は満足度が高く続けやすいです。小さくても“もらって嬉しい・家族に話したくなる”設計にしましょう。
よくある失敗
売上など結果だけを評価して、育成の行動を見ないこと。結果=遅行、行動=先行として分けて評価しましょう。部下・上司の双方が「どこが良かったか」を言語化する習慣が鍵です。
まとめと次の一歩
人が育てば、人は集まります。大事なのは「小さく始めて、週1で回す」ことです。制度は人を縛るためでなく、人が成長する場を支えるためのもの。そこにDXを取り入れると、もっと働きやすい未来をつくれます。一緒に進めていきましょう。
- 原因は「属人化・不透明・学び不足」。まず見える化します。
- 90日で最小セット(標準書・チェックリスト・1分動画・週1OJT)を整えます。
- 採用では「育成方針」を求人と面談で見える化し、定着は行動評価で後押しします。