「せっかく採用したのに、3か月もたたずに辞めてしまう…」。福岡の中小企業でも、現場でよく聞くお悩みです。原因は本人の“やる気不足”だけではありません。最初の90日で何を用意し、どう関わるかで“定着”は大きく変わります。本記事では、入社から3か月の“やることリスト”を、福岡ならではの商習慣や空気感に合わせて、やさしく具体的に整理します。今日からすぐ実践できる形でご紹介します。ここは押さえておきましょう。
この記事のポイント
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最初の1週間で不安をゼロに近づける
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席・道具・人間関係の「受け入れ三点セット」を整えます。初日〜3日目の声かけ例も示します。心理的安全性(安心して意見を言える状態)を先につくりましょう。
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1か月目は“型”を一緒に作る
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OJT(職場内訓練)を小さな手順書と動画で回せます。A4一枚で十分です。“同じやり方”があると人は迷わず力を出せます。
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2か月目は任せて見守る
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週20分の1on1(個別面談)と小さな目標で自走を促します。見守りのコツを載せます。評価ではなく「話せる場」にしましょう。
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3か月目で定着を固める
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振り返り面談と評価のつなぎ方を解説します。次の成長テーマを一緒に決めます。“この会社で頑張りたい”という気持ちを言葉にします。
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道具はシンプルでOK
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紙・表計算・共有フォルダで十分始められます。福岡の取引先事情に合わせた実例つきです。まずは小さく試してみましょう。
入社1週間:不安をなくす土台づくり
人が辞める最大の理由は「ここに居場所がない気がする」ことです。初週は知識よりも安心づくりを最優先にしましょう。席・道具・人・仕事の流れを、迷わずたどれる状態に整えます。「人は納得して動くと力を発揮できます」。まずは納得の土台を一緒につくりましょう。
受け入れチェックリスト(初日〜3日目)
- 席・名札・メール・勤怠の設定が完了できています
- 机の上に「今日の予定」と「誰に聞くか」の紙を置いています
- 昼食・休憩のタイミングと場所を伝えています
- 1日の終わりに5分だけ感想を聞けています(感じた不安を言葉にするだけで不安は小さくなります)
福岡の具体例:最初の昼は「うどん同行」
博多の現場なら、初日の昼は近所のうどん屋で「ざっくばらん」な歓迎をしましょう。博多弁まじりでも大丈夫です。「困ったら、わしに言うてね」と一言あるだけで、緊張はぐっと下がります。商店街で常連が新人を自然にリードするように、“顔が見える関係”を最初に作りましょう。
よくある誤解:丁寧すぎる説明は逆効果?
初日に就業規則をすべて読み上げるより、今日やること3つに絞った方が安心できます。細かいルールは、実務の中で少しずつ覚えてもらいましょう。情報は「今必要な分」に区切ると記憶にも残ります。
1か月目:仕事の「型」を一緒に作る
配属後の1か月は、教える側と学ぶ側で「やり方」が食い違いがちです。そこで、A4一枚の手順書と短い動画で“型”を共有します。完璧でなくて構いません。まず回すことが大切です。“見て覚えて”を“見ればわかる”に変えましょう。
OJT(職場内訓練)の手順
- やってみせる(3分の実演)
- いっしょにやる(5分の付き添い)
- ひとりでやる(10分の任せ)
- 振り返る(2分の気づき共有)
手順書の作り方:A4一枚テンプレ
見出し
作業名/目的(なぜするか)/完了の基準(できた状態)
手順
番号付きで3〜7手順に分け、各手順は1行で書きます。写真1枚があるとさらに良いです。完了の目安時間も一言添えると迷いません。
福岡の具体例:卸×小売の朝のルート
博多駅周辺の卸から天神の小売へ朝の納品に回る場合、ビル搬入口の時間帯やエレベーター混雑を手順書に入れておくと、新人も迷いません。山笠のように「自分の役割がわかる」と動きが揃います。
よくある失敗:口伝えオンリー
「見て覚えて」で終わると、人によって差が広がります。最低限は紙に。動画はスマホの1分撮りで十分です。再現性が“品質”を守ります。
2か月目:任せて、見守る
型ができたら、今度は小さな担当範囲を任せます。ポイントは目標を小さく、期限を短くすること。できた体験を積み上げる時期です。任せる=放置ではありません。合図を決めて、安心して挑戦できる距離で見守りましょう。
目標の置き方(SMARTのやさしい訳)
- 具体的:何を(例:受発注入力)
- 測れる:1日15件
- 手が届く:今の力でいける
- 会社に合う:現場の流れに合致
- 期限あり:今週金曜まで
1on1(個別面談)週20分の型
- よかったこと1つ
- 困りごと1つ
- 次の1週間で試すこと1つ
福岡の具体例:現場同行のコツ
筑紫野や糸島の顧客訪問では、土地勘がない新人は移動だけで疲れます。午前は同行、午後は事務所で復習など、体力配分を計画に入れましょう。屋台で常連がテンポよく段取りを教えるように、無理のないペース配分がコツです。
3か月目:定着を固める
最初の3か月の締めくくりは、振り返りと次の約束づくりです。ここで「この会社でやっていけそう」と思えれば、離職の山を越えられます。できた・できないを“人格”ではなく“事実”で扱いましょう。
振り返り面談:30分の進め方
- できるようになったこと(事実)
- うまくいかなかったこと(原因)
- 会社として用意する支援(約束)
- 本人が次に挑戦すること(1〜2個)
スキル表と評価のつなぎ方
表計算でスキルの行×段階の列を作り、達成に応じて○を入れます。昇給・手当の条件を1つでも結びつけると、努力が見える化できます。“努力が報われる仕組み”は、定着の強い味方です。
福岡の具体例:繁忙期を見越す
博多どんたくや大型連休は物流や来客が増えます。新人には1か月前から臨時体制の手順書で練習しておくと安心できます。事前のシミュレーションが“いざという時の余裕”を生みます。
仕組み化:小さく始めて回し続ける
辞めない会社は、特別な道具より続ける仕組みがあります。最初は紙と表計算で十分。共有フォルダや紙のバインダーを「引き継ぎ箱」にして、誰でも見られる状態を保ちましょう。更新日をメモして“古くならない資料”にします。
最低限の道具セット
- A4手順書フォーマット(印刷可)
- 1分動画(スマホ撮影)
- 週次1on1メモ(表計算)
福岡の具体例:取引先の“地元ルール”
老舗の取引先では、訪問時間や受付方法など、暗黙の決まりがあることも。新人向けに「この会社の心得」を3行でメモし、引き継ぎ箱に入れておきましょう。顔が見える関係ほど、最初の挨拶と段取りが効きます。
用語ミニ解説
- OJT(職場内訓練):職場で先輩が実務を通して教える方法です
- 1on1(個別面談):上司と部下が1対1で短時間話す場です
- SMART(目標設定の考え方):具体的・測れる・手が届く・会社に合う・期限ありの頭文字です
まとめと次にやること
- 初週は「受け入れ三点セット」と声かけで不安を下げます
- 1か月目はA4一枚の手順書と短い動画で“型”を共有します
- 2〜3か月目は任せて見守り、面談と評価で定着を固めます