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ベテラン社員の頭の中にしかない知識を“見える化”する方法

ベテラン社員の頭の中にしかない知識を“見える化”する方法

「あの作業、田中さんしかできんけん」「急ぎの時に限ってベテランが不在たい」――福岡の現場でも、こんな“属人化(特定の人だけができる状態)”にヒヤッとしたことがあるかもしれません。本記事では、ベテラン社員の頭の中に眠るコツや判断基準を、誰でも使える形に“見える化”する方法を、むずかしい言葉を避けつつ、具体的な手順でお伝えします。インタビューだけに頼らず、観察・録画・チェック表・小さな実験を組み合わせて、明日から小さく始めて共有できるようになりましょう。

この記事のポイント

最初は棚卸しから

業務の洗い出し→重要度づけ→優先順位で、どこから見える化するかが整理できます。

観察と記録で拾う

画面録画・手元動画・チェック表で“生の手順”をその場で残せます。言葉にしづらいコツも拾えます。

形は3点セットで十分

手順書・60秒動画・業務フロー図の3点にまとめると、教育と引き継ぎが回しやすくなります。

続ける仕組みを作る

更新担当と保管場所を決め、月1回の見直しで“作って終わり”を防げます。

なぜ“見える化”が必要か

人に依存したままの現場は、急な退職や繁忙期の増員で一気に止まってしまいます。見える化は「仕事の品質を守る保険」であり、「新人の戦力化を早める投資」と考えましょう。

現場で実際に起きる困りごと

  • 品質が安定しない(人によって仕上がりが違う)
  • 育成に時間がかかる(毎回いちから口頭説明)
  • 改善が進まない(そもそもやり方が共有されていない)
「いつ・誰が・どう判断するか」を言語化できれば、代替要員を安心して配置できます。

福岡の具体例:繁忙日の屋台仕込み

屋台の仕込みは「勘」になりがちです。例えば「スープは◯◯℃で◯分キープ」「替え玉は◯秒で湯切り」と数値で残すだけで、応援スタッフでも同じ味を再現できます。

用語ミニ解説:ナレッジ

ナレッジ(仕事の知恵・事例のこと)は、経験から生まれる再現性のあるコツです。「誰がやっても同じ結果になる材料」と覚えておきましょう。

何を残す?知識の棚卸し

全部を一気にやる必要はありません。止まると困る仕事・品質に直結する仕事・事故リスクがある仕事から始めましょう。

棚卸しの手順(4ステップ)

1)業務の洗い出し

「日・週・月」で行う仕事を付箋や表に書き出しましょう。

2)重要度を決める

止まると売上や安全に影響するかでA/B/Cに分類します。

3)難易度を見積もる

新人が自走できるまでの目安時間でS/M/Lに分けます。

4)優先順位を決める

A×Sから着手すると効果が出やすく、現場の納得も得られます。

棚卸しチェックリスト

  • 判断が必要な“境目”が特定できていますか(合格/不合格の基準)
  • 例外対応(雨天・欠品・機械不調など)のメモがありますか
  • 関係部署や取引先との連携ポイントが明記されていますか

福岡の具体例:明太子工房の品質基準

「漬け込み時間」「計量の許容差」「出荷前の目視ポイント」を棚卸しし、写真付きで残すだけで、新人の検品精度が早く安定します。

どう集める?観察・録画・インタビューの使い分け

インタビューは有効ですが、それだけに頼らず、観察→記録→確認の流れで“生の手順”を拾いましょう。

インタビュー以外で“見える化”する5つの方法

  1. 画面録画・手元録画:PC作業はスクリーン録画、現場は胸ポケットのスマホで手元を撮影。再生しながら「クリック1回=1手順」「工具持ち替え=判断ポイント」で区切ると手順が浮かび上がります。
  2. シャドーイング:半歩うしろから付き、作業の前後だけ「今、何を確認しましたか?」「OKの見た目は?」と聞きます。現場を止めずにコツを採取できます。
  3. チェックリスト化:「道具・温度・時間・合格の見た目・例外対応」の5行だけの表を現場で埋めます。項目先行でスルッと書けます。
  4. ミニ・ワークショップ:朝礼15分で一手順だけ実演→皆で写真→その場で1枚手順書の叩き台を作成。長会議にしないのがコツです。
  5. 失敗・クレームから逆引き:直近の手戻りを3件選び、「どの基準が無かった?」から作ると、使われる資料になります。

仕事タイプ別:最短ルート

PC中心(受発注・請求など)

やること:スクリーン録画 → クリック順の箇条書き → よくあるエラーの対処

ショートカットや社内ルール(ファイル名の付け方など)を字幕で載せると、新人がすぐ真似できます。

対面・接客(観光・小売・飲食)

やること:会話の型 → NG例 → 代替案

「初見のお客様への最初の一言」「混雑時の案内の順番」をカード化。言い回しは博多らしく柔らかく「よかったらこちらどうぞ」で統一しましょう。

製造・物流(工場・倉庫・配送)

やること:手元動画 → 合格の見た目の写真 → 温度や締付トルクの数値

配送は「渋滞回避の出発時刻」「積み順の写真」を残すと、代打ドライバーでも迷いません。

福岡の具体例:仕出しの盛り付け

博多の仕出し店で「彩りが弱い」と言われがち。手元動画で並べ方を撮り、赤・黄・緑の配置ルールをチェック表にしたところ、アルバイトでも仕上がりが安定しました。

形にして共有:手順書・動画・業務フロー

形は増やしすぎないことがコツです。手順書・60秒動画・業務フロー図の3点を基本形にしましょう。

1枚手順書(紙1〜2枚で完結)

  • 1ページ目:目的/必要な道具/安全注意
  • 2ページ目:手順(写真+短文)/合格基準/NG例/例外対応
長文は禁止。写真8割・文字2割でテンポよく作りましょう。

60秒動画(無音でも伝わる)

縦撮り→字幕(手順番号と基準)→最後にNG1カット。音声は後回しでOKです。

業務フロー図(手書き→清書)

まず手書きで「開始→判断(はい/いいえ)→次の作業」を四角とひし形で描き、後で清書します。例外ルートを薄く描くと迷いません。

運用のミニルールとよくある失敗

  • 置き場所を固定:クラウドの公式フォルダを一つに。紙は作業台の定位置へ。探させないのが正義です。
  • 更新担当は持ち回り:毎月1テーマだけ改訂し、朝礼1分で変更点を共有。
  • よくある失敗:最初から完璧を狙う→下書きのまま使い、後で清書/資料が増えすぎる→3点セットで固定。

福岡の具体例:物流の朝ルート

「倉庫開錠→温度確認→ピッキング→二重チェック→積み込み→出発」をフロー化。渋滞回避の出発時刻も明記すれば、代打ドライバーでも安心です。

まとめと次にやること

  • 棚卸し→優先順位で、止まると困る仕事から始めましょう。
  • 観察・録画・チェック表→確認で、インタビューだけに頼らず“生の手順”を拾いましょう。
  • 手順書・60秒動画・フロー図の3点セットにして、運用のミニルールで回しましょう。
次にやること:今週、A×Sの仕事を1つ決め、スマホで60秒撮影→写真3枚で「1枚手順書」の叩き台を作成しましょう。

もうちょっと知りたかなら、サクッとメールばちょうだい。

小倉 直樹(おぐら・なおき)

執筆者紹介

小倉 直樹(おぐら・なおき)

業務改善ライター/元SE

紙とExcelを卒業するための実務的な工夫を得意とする。
「仕組み化で人に頼らない現場づくり」をテーマに、効率化事例やツール導入のノウハウを紹介。
几帳面な性格から、記事内でも「チェックリスト化」「手順分解」にこだわる。

趣味:釣り/Excelマクロ収集/家電リサーチ

■出身地
福岡県北九州市

■学歴
1990年 福岡県立東筑高等学校 卒業
1994年 九州工業大学 情報工学部 卒業

■経歴
1994年 SIer勤務 システムエンジニア…中小企業の基幹システム構築
2004年 事業会社 情報システム部…社内業務の効率化・RPA導入
2013年 独立コンサルタント…バックオフィス改善・業務標準化支援
2025年 「ChotGPT Fukuoka」専属ライター…紙業務のDX・仕組み化事例を担当

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