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屋台のオーダーをスマホで?福岡の飲食店に広がる小さなDX

屋台のオーダーをスマホで?福岡の飲食店に広がる小さなDX

「屋台でもスマホで注文できるらしいね」と耳にして、「うちみたいな小さな店に関係あると?」と感じた方もおるかもしれません。実は、紙の伝票や口頭の注文を少し置き換えるだけで、忙しい時間帯のミスが減って、会計も早うなります。この記事では、福岡の飲食店で進む“ちょい足しのDX(デジタルで仕事をちょっと良くする工夫)”を、むずかしい言葉抜きで具体的にお伝えします。

まずは「スマホ注文」だけ

全メニューをアプリ化せず、QRコード(スマホで読む四角いコード)から注文を受けるだけでも効果が出ます。少しずつ始めましょう。

小さく始めて広げる

繁忙帯の人気商品から試すと現場の負担が少なく、スタッフの不安も減らせます。慣れたら会計や在庫にも広げられます。

費用は月数千円から

タブレット1台と無料〜小額のサービスで導入できます。まずは「紙の伝票の置き換え」程度の発想で十分です。

現場改善が主役

ITの派手さより、配膳ミス削減や会計の待ち時間短縮など、毎日の困りごとを解くことが目的です。

データで次の一手

スマホ注文の履歴を見れば、仕入れや仕込み量の精度が上がります。もったいないロスも減らせます。

小さなDXとは?—“一品から”の見直しで十分です

ここで言うDX(仕事のやり方をデジタルで良くする取り組み)は、システムの大工事ではありません。注文・会計・在庫などの一部分を、紙や口頭からスマホやタブレットに置き換えるだけでも立派な前進です。目的は効率化とムダ削減、そしてお客さまの体験向上です。

まずは「今いちばん困っている作業」を一つ決めて、そこだけデジタルに置き換えます。

福岡の具体例:屋台での“席ごと注文”

中洲の屋台を例にすると、席ごとに置いたQRコードからスマホで注文を受けるだけで「すみませーん!」の呼び出しが減ります。店主はタブレットで注文一覧を確認でき、焼き手は作る順番を見失いにくくなります。

カタカナ用語のミニ解説

QRコード(スマホで読み取る四角いコード)

紙メニューの代わりに、注文ページへ案内できます。

POS(会計の仕組み)

売上や商品別の数を自動で集計できます。あとから見直しが楽になります。

クラウド(店の外にある計算機を借りる仕組み)

データの保管や更新が簡単で、機器が壊れても復旧しやすくなります。

全体設計—最初は“売れ筋5品+ドリンク”だけで十分です

いきなり全メニューを載せず、まずは売れ筋5品+定番ドリンクに絞ります。フォーム入力項目は「席番号/商品(チェック方式)/数量/備考(任意)」の4つだけにします。現場の混乱を避け、効果を早く確かめられます。

はじめから完璧を目指さず、1〜2週間で回して直す前提にすると現場が楽になります。

よくある誤解と対策

  • 写真や説明文が必須?→最初は文字だけでOK。迷う要因を減らせます。
  • 会員登録が必要?→不要。匿名で注文できる設計にすると速く回せます。
  • カスタム項目は?→「辛さ・氷少なめ」などは備考に一本化します。

用語ミニ解説

フォーム(入力ページ):お客さまが選んで送る画面のこと。チェックボックス(複数選択):人気メニューを選びやすくできます。

注文ページの作り方—無料フォームで最短10分

ここでは例としてフォーム型の注文ページを作る手順を紹介します。操作はクリック中心で、特別な知識は不要です。

手順:フォーム作成(例:Googleフォームの流れ)

1. 新規フォームを作る

タイトルを「注文ページ(店名)」にして、説明に「席番号を入れてください」と明記します。

2. 質問を追加する

  • 席番号(短い回答)※必須
  • 商品(チェックボックス)※必須/「焼きラーメン」「餃子3個」など売れ筋に限定
  • 数量(数値)※必須/初期値1
  • 備考(長文)※任意/「ネギ抜き」「氷少なめ」など

3. 回答設定

「回答をスプレッドシートに保存」をオンにします。これで注文一覧が自動で表に並ぶようになります。

4. 見やすいテーマに

文字サイズを大きめ、背景は白系にして視認性を上げます。

5. URLを取得

「送信」→「リンクアイコン」→URLをコピーします。可能なら短いURLにしてQRが小さくても読み取りやすくします。

福岡の具体例:屋台の“時間限定メニュー”

中洲の屋台なら、フォームの「セクション」を使って「17〜19時のセット」を分けて表示できます。ハッピーアワー帯だけ目立つ位置に出して、会話での案内を減らせます。

チェックリスト:公開前の確認

  • スマホで1分以内に注文が完了するか
  • 席番号の入力漏れを防ぐため「必須」になっているか
  • 商品名と店頭メニューの表記が一致しているか
  • 回答がスプレッドシートに反映されるか(実注文テスト)

注文を受け取るタブレット—“見逃さない”設定がカギです

厨房やレジ横に置くタブレットは、通知と見やすさを最優先にします。中古端末でも十分使えます。

手順:タブレットの基本設定

1. 表示の固定

ブラウザでスプレッドシート(回答一覧)を開き、拡大表示120〜150%にします。画面の自動回転はオフにします。

2. 通知音とスリープ

新着行が見えやすいよう、行の背景色が変わるフィルタビューを使うと便利です。スリープまでの時間を長め(30分など)に設定します。

3. 設置と保護

耐油ケース+自立スタンドを用意し、高さは目線〜胸の位置に。電源ケーブルは足元に垂らさず固定します。

現場の運用小ワザ

  • 「注文確認→調理→提供済み」の列を作り、チェックで進捗を回す
  • ピーク時は「商品別ビュー」に切り替え、同じ品をまとめて作る
  • 雨天やイベント日は最初からスタッフ多め配置に切り替える

カタカナ用語のミニ解説

ビュー(表示の切り替え):表の見え方を変えること。フィルタ(条件絞り込み):特定の商品や未処理だけを表示できます。

QRコードと卓上札—読み取りやすさが命です

QRは「読み取りやすさ>見た目」で作ります。席番号の表記とラミネートで耐久性を上げましょう。

手順:QRの作成〜印刷

1. 注文ページのURLを準備

長すぎるURLは誤読の原因になります。可能なら短縮URLを用意します。

2. QRコードを生成

QR作成ツールでURLを入れて出力します。誤誘導を避けるため同じURLで複数席のQRを作らないよう注意し、席番号はデザイン側に大きく印字します。

3. 卓上札を作る

A6〜はがきサイズに、QR 5cm角以上・席番号大きく・注文手順を3行で記載。「スマホが苦手な方は口頭でOK」も添えます。

4. 印刷と耐久

厚紙+ラミネートか、スタンド付きカードを採用。油はねのある場所では防水紙が安心です。

福岡の具体例:商店街の立ち飲み

新天町の立ち飲みなら、柱ごとに共通QR+卓上は席番号のみにして案内をシンプルにできます。混雑時の案内が楽になります。

よくある失敗

  • QRが小さすぎて読めない→5cm角以上、周囲に余白(静かなスペース)を確保
  • 照明の反射で読み取り不可→マット紙を使用し、設置角度を調整
  • 席番号の書体が細い→太字で遠目からも判読できるものに

運用の回し方と“ちょい足し”拡張—無理なく段階アップ

最初の1週間で慣れて、2週間目から小さく拡張します。数字で判断して、効いた工夫だけを定着させます。

一日の運用フロー例

  1. 開店前:テスト注文で通知と表の反映を確認
  2. ピーク前30分:人気5品の在庫数を再確認
  3. ピーク中:商品別ビューで同時調理、提供後にチェック
  4. 閉店後:品切れ時刻・提供時間の平均をメモ

“ちょい足し”アイデア

  • 人気品だけ写真を追加し、迷いを減らす
  • 雨の日限定の割引セクションを用意
  • 売り切れ時はフォームの該当項目を一時的に非表示
  • 回答表に「調理メモ」列を作り、焼きと揚げを分けて段取り最適化

チェックリスト:週1の見直し

  • 注文→提供の平均時間は短縮したか
  • 会計待ちの行列は何分減ったか
  • 品切れの回数・時刻の傾向はどうか
  • お客さまからの戸惑いの声は何件あったか

カタカナ用語のミニ解説

セクション(画面の区切り):時間帯やカテゴリでページを分けられます。短縮URL(短いリンク):QRが小さくても読み取りやすくなります。

福岡の具体例:糸島のカフェ

土日は「スイーツ先出し」運用に。注文表の並び替えで甘味優先にすると、席の回転が良くなります。波の日(サーフィン客が多い日)は朝からホットの比率が上がる、など土地のリズムもつかめます。

注意:個人情報は“持たない設計”

名前・電話番号は集めない前提にすると管理が楽になります。どうしても必要な場合は目的と保存期間を卓上札に明記しましょう。

まとめと次にやること

  • 売れ筋5品+席番号のシンプル設計で、無料フォームから始められます。
  • タブレットは通知と見やすさを最優先にし、チェック列で進捗を回します。
  • QRは短いURL+5cm角以上+席番号大きくで読み取りミスを防げます。
次にやること:今夜、試しのフォームを作って1件テスト注文→明日、A6の卓上札を2枚だけ印刷して、常連さんの時間帯で小さく運用してみましょう。

もうちょっと知りたかなら、サクッとメールばちょうだい。

糸島 歩(いとしま・あゆむ)

執筆者紹介

糸島 歩(いとしま・あゆむ)

DX設計者/DX解説ライター

地域の中小企業の現場を30年追い続けてきた編集者。
「むずかしいDXを、現場の言葉に翻訳する」が持ち味。
記事だけでなく、構成テンプレ・用語の言い換え辞書まで整える職人気質。

趣味:糸島ドライブ/磯あそびと子ども科学館めぐり/コーヒー焙煎少々

■出身地
福岡県糸島市

■学歴
1991年 福岡県立修猷館高等学校 卒業
1995年 九州大学文学部 卒業

■経歴
1995年 地方紙 経済部記者(福岡)…製造・建設・流通の中小企業を取材
2005年 事業会社 広報/オウンドメディア立ち上げ…BtoB記事と導線設計
2012年 フリー編集者…採用広報・事例記事・ホワイトペーパー制作
2018年 IT/SaaS企業 コンテンツストラテジスト…DX導入事例とHow-to量産
2025年 「ChotGPT Fukuoka」専属ライター…“ちょっとDX”の入門・事例・制度解説を統括

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