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博多山笠に学ぶDX:役割分担と情報共有が早さを生む

博多山笠に学ぶDX:役割分担と情報共有が早さを生む

「DXってうちみたいな中小には関係なかろうもん?」――そう感じる方にこそ、博多の夏を駆け抜ける山笠から学べることがあります。山笠は、役割分担と情報共有が見事にかみ合い、時間との勝負に強い組織をつくります。本記事では、そのエッセンスを会社の仕事に置き換え、ムダを減らし、判断を早め、現場が動きやすくなるDX(デジタルで仕事を良くする取り組み)の第一歩を、福岡の商い目線でやさしく解説します。

山笠の段取りはDXの型

山笠の役割分担と合図の仕組みを「仕事の流れ」に置き換えるだけで、スピードが生まれます。

情報は一箇所に集める

紙や口頭の連絡を「見える化」し、誰でも同じ情報に届く仕組みをつくれます。

小さく始めて回す

まず1業務・1部署・1週間の改善から。成功体験を積み重ねましょう。

デジタルは道具、主役は人

ツール任せにせず、現場の段取りを整えてから入れ替えると失敗しにくくなります。

数字で確かめて次に進む

「何分早くなったか」を測り、次の打ち手を決める習慣を作れます。

山笠に学ぶ「速さ」の正体を分解する

速さは根性ではなく、役割分担(誰が何をいつやるか)情報共有(同じ合図で動ける状態)の積み重ねで生まれます。会社のDXも同じで、ツールを入れる前にこの2点を整えると、一気に回りやすくなります。

速さ=「待ち時間を減らす」+「判断のやり直しを減らす」ことです。

福岡の現場で置き換える具体例

例えば博多の卸売会社。注文をFAX→電話確認→入力の三段階でやっているなら、山笠でいう追い山前の「確認の合図」が多すぎる状態です。注文はフォーム(入力枠)に一本化し、誰でも見られる一覧に集約します。これで「待ち」と「聞き直し」を同時に減らせます。

カタカナ用語の最小セット

ワークフロー(仕事の流れ)/クラウド(ネット上の共有庫)/ダッシュボード(状況をひと目で見る板)。難しく考えず、山笠の「当番表」「連絡板」「合図の法」をデジタルに置き換えるとイメージできます。

よくある誤解

「ツールを入れたら速くなる」は半分本当、半分うそです。段取りが曖昧だと、道具が増えても進みません。

役割分担をDXに置き換える:小さな型をつくる

まずは「誰が・いつ・何を・どこに残すか」を決め、責任の置き場所をはっきりさせましょう。山笠の台上がりと同じで、担当の「持ち場」を固定すると動線が短くなります。

手順:1業務・1週間で試す

  1. 対象を一つ選ぶ(例:見積り対応)。
  2. 担当の役割を3つに区切る(受け・作成・承認)。
  3. 提出先を一箇所に固定(共有フォルダ or 簡易ツール)。
  4. 締切の合図を統一(午前/午後の2回通知)。
  5. 翌週に所要時間を計測して見直します。

福岡の例:小売の朝の段取り

天神の小売店なら、朝礼で在庫点検の役割を「入口側・レジ周り・倉庫」に分け、チェック結果はタブレットの同一シートに入力。「足りん」と気づいたら即発注待ちリストに回すだけにします。

用語ミニ解説

RPA(定型作業を自動化する仕組み):毎朝の売上CSV整理など、手順が決まっている作業に向きます。まずは人の流れを決めてから機械に置き換えましょう。

情報共有の「合図」を統一する:見える化の基本

情報は一箇所に集め、「最新がどれか」を悩ませないことが最重要です。紙・口頭・LINEが混ざると、山笠でいう「合図が二重三重」になり、足並みが乱れます。

チェックリスト:これだけは揃える

  • 共通の置き場を一つ(クラウド=ネット上の共有庫)。
  • ファイル名の型:「日付_案件名_版」。
  • 既読ではなく「完了の押印」(チェック欄)で管理。
  • 通知は1日2回の定時のみ。緊急は電話で別扱い。

福岡の例:製造の現場ボード

糸島の工場では、紙の進捗ボードをタブレットの一覧に置き換え。工程ごとに「着手・仕掛・完了」の三色マグネット代わりに、ボタン三つで登録します。現場も事務も同じ画面を見るだけで会話が早くなります。

よくある失敗

「とりあえず全部の通知をON」にすると、大事な合図が埋もれます。まず「締切・遅延・承認のみ」に絞りましょう。

小さく始める導入手順:今日から回せる

大がかりな計画は要りません。山笠も練習を重ねて仕上げるように、DXは小さく試し、早く振り返りを回すのがコツです。

3ステップで試運転

ステップ1:見える化

案件一覧を一枚に集約(紙でも可)。担当・期限・状態の三列だけに絞ります。

ステップ2:合図の統一

期限前日の午前に自動通知(リマインド=思い出させる合図)を設定。電話は緊急のみ。

ステップ3:数字で確認

KPI(追う数字)は「見積り提出までの平均時間」。1週間で何分縮んだかだけ見ます。

福岡の例:飲食の予約対応

中洲の飲食店なら、予約はフォーム一本化→一覧自動記入→席割り表に反映。電話の聞き直しが減り、ピーク前の仕込みに集中できます。

導入のコツ

「紙→半デジ→フルデジ」の三段階で移行しましょう。いきなり全部変えず、現場の習慣に合わせて慣らします。

まとめと次の一手

山笠の知恵は、福岡の商いにもそのまま活きます。役割分担と合図(情報共有)を整え、数字で確かめれば、会社は自然と速くなります。

  • 役割分担を固定し、責任の置き場所を明確にできます。
  • 情報の置き場を一箇所に統一し、最新を迷わず共有できます。
  • 小さく試して数字で確認し、成功体験を積み重ねできます。

次にやること:来週1週間だけ、対象業務を一つ決めて「一覧一枚+通知2回」で試しましょう。終わったら、何分縮んだかを皆で見て次を決めます。

もうちょっと知りたかなら、サクッとメールばちょうだい。

糸島 歩(いとしま・あゆむ)

執筆者紹介

糸島 歩(いとしま・あゆむ)

DX設計者/DX解説ライター

地域の中小企業の現場を30年追い続けてきた編集者。
「むずかしいDXを、現場の言葉に翻訳する」が持ち味。
記事だけでなく、構成テンプレ・用語の言い換え辞書まで整える職人気質。

趣味:糸島ドライブ/磯あそびと子ども科学館めぐり/コーヒー焙煎少々

■出身地
福岡県糸島市

■学歴
1991年 福岡県立修猷館高等学校 卒業
1995年 九州大学文学部 卒業

■経歴
1995年 地方紙 経済部記者(福岡)…製造・建設・流通の中小企業を取材
2005年 事業会社 広報/オウンドメディア立ち上げ…BtoB記事と導線設計
2012年 フリー編集者…採用広報・事例記事・ホワイトペーパー制作
2018年 IT/SaaS企業 コンテンツストラテジスト…DX導入事例とHow-to量産
2025年 「ChotGPT Fukuoka」専属ライター…“ちょっとDX”の入門・事例・制度解説を統括

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