「このままじゃ値下げ合戦に巻き込まれる…」——その不安、ようわかります。福岡の商いは顔が見えるのが強みですが、忙しくなるほど仕組みが追いつかず、つい価格で勝負しがちですよね。この記事では、値下げせずに“指名される会社”へ育てる、今日から回せる仕組みづくりを、むずかしい言葉ヌキでやさしく解説します。読み終わるころには、「まず何からやるか」がスッキリ決まります。
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指名は「仕組み」で生まれます
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職人ワザや人柄だけに頼らず、再現できる流れを作れば、誰が対応しても同じ品質。結果として売上アップにつながります。
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まずは顧客台帳の一本化
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紙・個人スマホ・頭の中の情報を一つに集めて見える化。ここが全部の土台です。
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小さく自動化して手離れ
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予約確認や定期連絡など、ちょっとした繰り返しは機械に任せましょう。人は“売れる会話”に集中できます。
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値引きの代わりに継続特典
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定期点検や回数券など、続けるほどお得な仕掛けで関係を深めます。屋台の常連さん戦略ですたい。
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失敗は「やりすぎ」と「丸投げ」
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大がかりに始めず、現場の声を聞きながら少しずつ整えるのが定着のコツ。必要あれば外部の力も小さく短く。
値下げ競争から抜ける考え方(BtoB向け)
値段だけで比べられるときは、相手が「違いを体験できていない」状態です。そこで、体験の寸法をそろえる → 不安を先まわりで消す → 記録を残して再現するの順に、BtoB(企業間取引)でも伝わり方を整えましょう。製造現場や法人営業ですぐ使える具体手順をお届けします。最終的には売上アップに直結させましょう。
「体験の寸法」をそろえる(SOP=標準手順を1枚で)
初回対応から納品後フォローまで、毎回の段取りを同じ“寸法”で提供できるようにします。SOP(作業の標準手順)をA4一枚で作り、誰でも同じ体験を再現できるようにしましょう。
製造業の具体例:試作〜量産の“3つの約束”
- 見える化(写真付き):初回試作の外観・寸法測定結果を写真と数値で共有します(例:ノギス写真+公差±0.05の記録)。
- 節目連絡:「材料手配完了」「試作完了」「量産立上げ」の3タイミングで必ず連絡します。
- 異常時の即報:不良率が基準超過のときは、当日中に暫定対策と再発防止のメモ(5W1H)を送ります。
法人営業の具体例:初回面談〜提案の“3ステップ”
- 初回10分の確認票:課題・評価基準・意思決定の流れの3点だけ聞き、確認票で合意します。
- 提案は3枚以内:現状→原因→解決の順で、費用だけでなくリスク低減と段取りを明示。比べられても負けません。
- 提案後24時間以内の要約:合意点と次アクション(例:現場確認、サンプル提出)をメール1通で送ります。
“値引き”の代わりに“安心”を添える(保証と透明化)
価格を下げるより、相手の不安を減らす仕掛けを足しましょう。保証(どこまで対応するか)と透明化(見える情報)を先出しにすると、自然と指名が増えます。
製造業の具体例:品質・納期の安心セット
- 品質保証の線引き:受入検査でNGのときの無償再製作条件と対応時間(例:受付から48時間以内)を書面で渡します。
- 納期可視化:工程ガントチャート(予定表)を週1で共有。遅延見込みは理由と代替案(分納・代替材料)を同時提示します。
- トレーサビリティ(追跡可能性):ロット番号と使用材料の記録をPDFで保存し、請求書に番号を記載します。
法人営業の具体例:契約前後の不安つぶし
- お試し条件:最初の1案件はスコープを絞り、成果指標と返金・やり直し条件を明記します。
- 連絡の定期便:週次10分の進捗コール+議事メモを固定(MA=見込み客育成の仕組みがあれば自動送信)。
- 切替時の停止リスク対策:旧運用と新運用の並走期間(2週間など)と連絡窓口を1枚で見せます。
福岡の具体例:地場の製造×卸・設備保全の現場
福岡は自動車・食品・金属加工の中小が多く、顔の見える取引が強み。そこに“ひと手間”を足すと、値段勝負から抜けやすくなりますばい。
例1:金属加工(小倉)— 図面ゆれを先に潰す
- 初回打合せで「絶対NGなバリ箇所」「外観優先部位」を写真でマークし、図面と一緒に保存します。
- 試作後は良品3点の実測表を添付。量産移行の判断が速まり、価格比較だけになりにくくなります。
例2:食品工場向け備品(博多)— 定期交換キット化
- 消耗部品を「3か月キット」にまとめ、回数券のように発注を簡単に(サブスク=毎月定額の仕組みでも可)。
- 納品時に交換チェック表を同梱。現場が迷わず作業でき、クレーム減で売上アップにも効きます。
例3:設備保全(筑後)— 異常の早期共有
- 点検結果は写真2枚+10文字コメント(例:軸受け温高め/次回グリス追加)で当日送付。
- 重大度を3色ではなく数字(1〜3)で示し、対応期限の合意を取りやすくします。
現場ですぐ使える最小テンプレ(貼って使いましょう)
SOP見出し(製造向け)
- 工程の節目(手配/試作/量産)と連絡タイミング
- 検査項目(寸法・外観・機能)と合否基準
- 異常時の連絡先・一次対策の型(5W1H)
初回確認票(営業向け)
- 課題(困りごと)/評価基準(成功の物差し)
- 意思決定の流れ(誰がいつ決めるか)
- 制約(予算・納期・社内ルール)
チェックリスト(この通りにできれば“指名”に近づきます)
- 初回〜納品後までのSOPがA4一枚で共有できています
- 節目連絡のタイミングが誰でも同じになっています
- 不具合時の即報と暫定対策が当日中に出せます
- 提案は3枚以内で、費用以外の価値(リスク低減・段取り)が明記されています
- 写真+10文字コメントの報告が習慣化できています
“指名される”を生む仕組みの全体像
やることは大きく見える化 → 標準化 → 自動化 → 継続関係の4段。高級なシステムは不要、今ある道具で十分始められます。ここを丁寧に回すと売上アップが積み上がります。
見える化:情報を一か所に
顧客台帳、案件の進み具合、問い合わせ履歴を一つに集約。スプレッドシートでOK。後から道具(ツール)は替えられます。
標準化:同じやり方を決める
初回対応の台本、見積りの型、納品後の電話テンプレを用意。新人さんが真似できるレベルまで具体化しましょう。
自動化:定型だけ機械に任せる
RPA、予約リマインド、請求書の自動発行など、繰り返し作業を小さく置き換え。人は判断が必要な仕事に集中できます。
継続関係:定期・会員・点検
サブスクや回数券、年次点検を仕組みに組み込みます。LTV(生涯売上)を高め、価格に振り回されにくくなります。
まずは顧客台帳の整備から(3日でできる超具体手順)
「パソコンは少し苦手…」という方でもすぐ進められるよう、クリック手順・声かけ文面・台帳の型まで用意しました。道具は社内の表計算ソフト(エクセル/スプレッドシート)で充分。まずは部署やチームを1つだけ選び、3日で形にしましょう。地道ですが、ここが売上アップへの近道です。
準備:使うものをそろえる(15分)
- 表計算ソフト(エクセル もしくは Googleスプレッドシート)
- 共用フォルダ(社内サーバー or Googleドライブ)
- スマホ(名刺を撮る用)
共用フォルダにフォルダを1つ作ります:「顧客台帳_試行_営業一課_2025-10」と名前を付けます。
1日目:情報を集める(散らばりを一箇所へ)
やることは集めるだけ。きれいにしようとせず、重複も気にせず入れます。止まらんことが勝ちです。
手順A:台帳ファイルを作る
- 表計算ソフトを開き、新規ファイルを作ります。
- 1行目に以下の見出しを入力します。
会社名|担当者名|電話|メール|住所|初回取引日|最近の取引日|購入品目|金額めやす|好み・注意点|次回約束日|担当者(社内)|最終更新日 - ファイル名を「顧客台帳(試行)_営業一課.xlsx」(スプレッドシートなら同名)で先ほどの共用フォルダに保存します。
手順B:名刺・スマホ・紙メモから入れる
- 机の引き出しや名刺ホルダーの名刺をガバッと出します。
- スマホで名刺を撮影しながら、上の見出しに沿って入力。読めないところは空欄でOK。
- 紙の発注書・納品書があれば「購入品目」「金額めやす」「最近の取引日」だけ入れます。
手順C:LINE・メールから拾う
- スマホの検索で取引先名を検索します(LINEやメールの検索窓)。
- 見つかったら「担当者名」「電話」「最近のやり取り日」を転記します。
- 終わったら社内チャットで下記の文面を送ります(チーム向け)。
「台帳の仮版できました。今週は営業一課だけで試します。足りない先は行名を追加してください。」
福岡の具体例(1日目)
天神の卸×飲食はLINE比率高め。過去の「納品写真」「数量確認」トークから、購入品目と曜日のクセ(例:火曜は多め)を「好み・注意点」に追記。これだけで新人さんの配達ミスがガクッと減ります。
チェックリスト(1日目のゴール)
- 取引先が30件以上入力されています
- 各行に「会社名」「担当者名」「電話」のどれか2つは入っています
- ファイルが共用フォルダに保存されています
2日目:項目の“型”を決める(誰でも同じ書き方)
今日は入力ルールをそろえる日。むずかしい設定は不要です。商店街の張り紙感覚でいきましょう。
手順A:入力の決めごと(貼って使える)
- 会社名:株式会社/有限会社などは省略せず正式名で
- 電話:ハイフンあり(例:092-123-4567)
- 日付:西暦8桁(例:2025-10-07)
- 金額めやす:数字だけ(例:50000)
- 好み・注意点:短文で3項目まで(例:辛味弱い/納品は裏口/月末請求)
手順B:入力ミスを防ぐ簡単設定
- 「次回約束日」「最終更新日」の列を選び、セルの表示形式を「日付」にします。
- 「担当者(社内)」は、右クリック→データの入力規則→候補(山田,田中,松尾…)のリストにします。
- 1行目を固定します(表示→ウィンドウ枠の固定→先頭行を固定)。
手順C:重複の仮整理(難しい式は使いません)
- 「会社名」列を選んで並べ替え(A→Z)。
- 上下で同じ会社名が並んだら、情報が多い方を残し、少ない方の空欄を埋めてから1行に統合。
- 迷う行は削除せず、行頭に「?」と入れて保留に。
福岡の具体例(2日目)
博多の屋台や個人店は屋号と正式名が違うことがあります。屋号(看板名)を「好み・注意点」に追記して検索性を上げましょう(例:正式「株式会社○○商事」/屋号「○○鮮魚」)。
チェックリスト(2日目のゴール)
- 入力ルールがシートの1行目の上(A1セルの上など)にメモされています
- 担当者(社内)がプルダウンで選べます
- 重複が減り、会社名で並べ替えても探しやすくなっています
3日目:連絡と記録のルール(回る仕組みに)
今日は連絡したら必ず台帳に1行残す運用を決めます。ここから“指名”が増えますよ。
手順A:面談・電話のあとに必ず入れる3点
- 「最近の取引日」:今日の日付
- 「好み・注意点」:要点を10〜20文字で1つ追加(例:辛子抜き希望)
- 「次回約束日」:次の連絡予定(なければ未設定と入力)
手順B:朝5分のルーティン
- 台帳を開き、「次回約束日」が今日〜3日先の行をフィルター表示。
- 上から順に電話・LINE・メールで連絡。
- 連絡後は「最終更新日」を今日にし、連絡手段(電/L/メ)を「好み・注意点」の末尾に追記。
手順C:社内の声かけテンプレ
- 依頼文:「台帳更新ルールを今日から回します。連絡したら3点(最近の取引日/好み追記/次回約束日)だけ入れてください。迷ったら未設定でOKです。」
- お客さまへの一言:「次回のご希望、台帳にメモしときますね。間違い防止のためですばい。」
福岡の具体例(3日目)
糸島の工務店なら、訪問後に「写真1枚+10文字コメント」を台帳のメモ欄に貼るだけでOK(例:雨樋の詰まり軽度/次回11月点検)。写真は共用フォルダの同名サブフォルダ「/写真」に保存しましょう。
チェックリスト(3日目のゴール)
- 「次回約束日」が空欄の行が全体の半分以下になっています
- 朝5分ルーティンが1回回せました
- 社内の2人以上が台帳を開いて入力できました
すぐ使える「台帳の型」サンプル
下の項目名をそのまま1行目に貼り付けて使えます。まずは小さく始め、回して改善。これが売上アップの王道です。
会社名|担当者名|電話|メール|住所|初回取引日|最近の取引日|購入品目|金額めやす|好み・注意点|次回約束日|担当者(社内)|最終更新日
つまずき対処(よくある質問)
社外から見えないようにしたい
共用フォルダのアクセスを「部署内のみ」に。Googleドライブならフォルダを右クリック→共有→「閲覧者/編集者」を部署メンバーだけに設定します。
スマホだけで更新したい
スプレッドシートのアプリを入れましょう。お気に入り登録して、朝5分ルーティンをスマホで実施できます。
間違って消してしまいそう
毎日終業時に日付付きでコピーを1つ残します(例:顧客台帳_営業一課_2025-10-07)。バージョン管理は安心の源です。
現場が回るミニルール(貼り紙用)
- 連絡したら「最近の取引日・好み1つ・次回約束日」を更新します
- 迷ったら空欄で前へ。保留は行頭に「?」
- 朝5分で「次回約束日」が近い順に3件だけ連絡します
- 削除はしません。統合は情報が多い方を残します
価値を反復で高める仕掛けづくり
「買って終わり」では値下げに負けます。買う前・買った直後・使っている間・更新時期のそれぞれで“うれしい体験”を足しましょう。常連化=売上アップの近道です。
予約とリマインドを当たり前に
日程の自動案内、前日リマインド、当日の道案内をセットに。迷わず来られるだけで満足度はグッと上がります。
定期点検・回数券・おまけ
「3回目で無料点検」「半年でフィルター交換」など、続ける理由を設計。値引きではなく継続のごほうびで勝ち筋を作りましょう。
福岡の具体例:糸島の工務店
引き渡し後に「季節の点検便り」をはがきで送付。雨樋の写真付きレポートを共有し、次回の小工事予約へ自然につなげます。紹介も増えて良い循環が生まれます。
用語ミニ解説:SFAとMA
SFA(営業の見える化の道具):面談履歴や見積り状況を共有できます。MA(見込み客を育てる仕組み):役立つ情報を計画的に届け、相談につなげます。
よくある失敗と回避策
どれも悪気はないのですが、定着しない典型パターンがあります。現場の負担を増やさず、小さく回す工夫が効きます。
失敗1:最初から高級システム
使いこなせず挫折しがち。まずは表計算と無料の予約ツールで十分。慣れてから拡張しましょう。
失敗2:現場に丸投げ
「良きに計らえ」では進みません。経営側が“何をやめるか”も決め、時間を空けます。屋台の仕込みと同じで、上流の段取りが命です。
福岡の具体例:製造の見える化
小倉の工場で、紙の作業票を写真で残すところから開始。1か月後には遅れ原因が見え、段取り替えのタイミングを統一。コストではなく納期で選ばれるようになります。
まとめと次にやること
- “指名”は人ではなく仕組みで再現できます
- 最初の一歩は顧客台帳の一本化と見える化です
- 値引きの代わりに継続特典と安心を設計します
次にやること:今週中に「顧客台帳の型」をA4一枚で作り、部署1つで3日間テストしましょう。小さく回して売上アップ、いきたいですね。