「DX(デジタルを使って業務やビジネスを良くすること)はうちには関係なかろうもん」「機械やアプリを足せば何とかなるっちゃろ?」――そんな声、福岡の現場でもよう聞きます。ですが、成功と失敗を分けるのは“やめる勇気”。ムダな作業を減らして、残すべき仕事に時間を回せます。本記事では、何をやめるかの見つけ方・小さく試すコツ・続ける仕組みを、福岡の具体例交えてやさしく解説します。結論、DXの成功と失敗の違いは、最初に「何をやめるか」を決めているかどうかです。
この記事のポイント
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足す前に減らす
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新しいツール導入の前に、やめる作業を決めます。ムダが残ったままだと、DXはかえって複雑になります。
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小さく試して判断
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1部署・1工程で短期検証を回します。数字で良し悪しを見て、広げるか撤退するかを決めます。
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現場起点で決める
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机上ではなく現場の声で「やめ候補」を洗い出します。朝礼や紙の帳票など身近なところから始めます。
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やめる仕組みを作る
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ルール・役割・指標(KPI:目標の数字)を決め、月例で見直します。続けてこそ効果が定着します。
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成功と失敗の線引き
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やめる日付・代替手順・測る数字が決まっとれば前進。どれか欠けると二重運用になり、現場が疲れやすくなります。
DXは「足す」より「やめる」から始めます
DXというと最新の機械やソフトを足す話になりがちですが、成功した会社はまず減らす・やめるから始めます。紙の転記、重複したチェック、承認のハンコなど、手間の元を外してから道具を選ぶと、効果がはっきり出ます。
よくある誤解
「DX=高価なシステム導入」と思い込みますが、本質は仕事のやり方を変えることです。無料の表計算でも、やめる設計ができていないと効果は出ません。
福岡の具体例
博多の卸売業で「紙の受注→転記→FAX返信」を一部やめ、「電話受付は午前のみ」「午後はWebフォームのみ」に整理しました。結果、入力のやり直しが減り、配達前日の残業が半分になりました。
成功する会社と失敗する会社、何が違う?
成功は「やめる」を先に決め、日付・代替・KPIを文書化してから小さく試します。失敗は道具だけ入れて紙や旧ルールを残す二重運用になりがちです。違いは「決めてから試す」か「試しながら迷う」かにあります。
- 成功:やめる対象を宣言 → 代替のやり方を1枚化 → 2週間で数字比較 → 拡大または撤退を明記
- 失敗:現場説明が後回し → 紙と新ツールの併用長期化 → 判断基準が曖昧で疲弊
チェックリスト
- やめる日付が決まっていますか?
- やめた後の代替手順が1ページで見られますか?
- 効果を測るKPI(時間・ミス・リードタイム)を前もって決めていますか?
福岡の具体例
春日市の小売業では、発注書の押印をやめる日を社内掲示で宣言し、代替は「担当者名入力+時刻記録」に一本化。翌月、発注処理の待ち時間が約40%短縮できました。
何をやめるかを見つける手順
やみくもに削ると現場が困ります。まずは可視化し、数字で優先順位を付けてから「やめ候補」を決めます。
手順
1.棚卸し:1日の作業を5分単位で書き出します(担当者・頻度・所要時間も)。
2.評価:頻度×時間×ミス回数で重さを見ます。顧客に影響が少ない順に並べます。
3.設計:「なくす/減らす/まとめる/自動化」のどれかを当てはめます。
4.決定:トップが「やめる日付」と「代替のやり方」を明文化します。
チェックリスト
- 同じ情報を2回以上入力しとらんですか?
- 承認者が多すぎませんか(3人以上になってないですか)?
- 紙・ハンコのためだけに出社しとらんですか?
- 「とりあえず全部CC」になってないですか?
福岡の具体例
中洲の飲食グループでは、仕入れの伝票を朝の手書きから、夜の閉店後にスマホ撮影→自動読取(文字を読み取る仕組み)へ変更。翌朝の転記をやめることで、店長の朝の30分を捻出できました。
小さく始めて確かめます
正解は会社ごとに違います。いきなり全社ではなく、1店舗・1ラインで短く試し、数字で判断しましょう。
具体例
請求書の手入力をRPA(定型作業を自動化)で30件だけ自動化。処理時間・ミス・残業を2週間で計測し、良ければ対象を100件に広げます。合わなければやめて別案に切り替えます。
よくある失敗
- 目的が「ツール導入」になる(本来は「残業を月20時間減らす」など)。
- ルールを変えずに自動化だけする(ムダが温存されます)。
- 教育を後回しにする(現場が不安で戻ってしまいます)。
福岡の具体例
新宮の物流会社では、配車表の作成をまず週1便だけスプレッドシート化(表計算の共同編集)しました。電話確認をやめて、コメント機能で指示に一本化。トラブルが減ったため、翌月から全便に拡大しました。
「やめる」を定着させる仕組みを作ります
一度やめても、忙しくなると元に戻りがちです。仕組みで支えれば、現場は安心して続けられます。
役割とルール
- 担当:現場の改善リーダー(各部署1名)。
- 決定:月例の「やめ会議」で最終決裁。
- 記録:やめた作業・理由・効果・問い合わせ先を1枚にまとめます。
指標の持ち方
KPI(目標の数字)は「入力時間」「ミス件数」「リードタイム(受注から納品までの時間)」など、現場で測れる数字にします。前月比・前年同月比で見える化しましょう。
福岡の具体例
小倉の製造業で、朝礼の紙資料配布をやめてモニター表示に一本化。KPIは「朝礼準備時間」と「配布ミス件数」。3か月で準備時間が1/3になり、現場の納得感が高まりました。
失敗から学ぶ“やめる勇気”
DXは試行錯誤が当たり前です。失敗は悪ではなく、次の打ち手の材料になります。ポイントは、引き際を数字で決めておくことです。
ケーススタディ
ある老舗の小売業では顧客管理ツールを導入しましたが、紙台帳も残して二重運用に。むしろ手間が増え、現場が疲弊。そこで紙台帳への新規記入をやめる日を宣言し、過去分は写真保存に切替。2週間で在庫照会の時間が半分になりました。
注意事項
- やめる対象は「顧客にとって価値が低いもの」から。接客時間のような価値は守ります。
- 法令・取引先ルールに関わるものは、事前に確認します。
福岡の具体例
天神のサービス業で、予約確認の「前日電話」をやめて、SMS(携帯のショートメッセージ)に変更。高齢のお客さまには個別対応の枠を残しつつ、全体の作業時間を2/3まで圧縮できました。
やめる勇気チェック(3問)
- やめる日付は決まっとりますか?
- やめた後の代替手順は1枚で見られますか?
- 効果を測るKPI(時間・ミス・リードタイム)は決まっとりますか?
まとめ
- DXの第一歩は「足す前にやめる」を決めます。
- 小さく試し、数字で広げるか撤退するかを判断します。
- 役割・ルール・指標を整え、「やめる」を定着させます。
次にやること:今週中に「やめ候補」を3つ書き出し、来週から1つだけ試験停止して数字を取りましょう。